法改正の話、後回しにしていませんか? 今後施行される主な法改正等 〜「まだ先」では済まされない経営者のための整理メモ〜

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法改正の話、後回しにしていませんか? 今後施行される主な法改正等 〜「まだ先」では済まされない経営者のための整理メモ〜

法改正の話を聞くと、
「また何か変わるんですよね」
「正直、全部は追いきれない」
そう感じる経営者の方は多いと思います。

日々の業務に追われる中で、法律の改正情報まで完璧に把握するのは、現実的ではありません。
私自身、経営者の方に
「全部覚えなくて大丈夫ですよ」とお伝えすることがほとんどです。

ただ最近は、
“知らなかった”では済まされない改正が増えてきている
そんな印象を持っています。

これから数年で、何が起きようとしているのか

今回ご紹介する法改正は、
2026年以降、段階的に施行される予定のものです。一見するとバラバラに見えますが、
共通しているのは次のようなポイントです。

  • 社会保険の適用範囲が広がっていく
  • ハラスメントや情報公開など「説明責任」が重くなる
  • 高齢者雇用・年金制度の見直しによる収入と働き方の変化

つまり、
人を雇う・働いてもらう前提そのものが変わっていく
という流れです。

まず直近で影響が出る改正(2026年施行)

2026年4月には、いくつかの改正が予定されています。

たとえば子ども・子育て支援金の徴収開始。これは健康保険料とあわせて徴収されるため事業主負担・従業員負担の両方に影響します。

また健康保険の被扶養者認定基準の見直しも予定されています。パート・アルバイトの働き方やシフト調整に影響が出る可能性があり、現場での説明や対応が必要になります。

企業規模によっては、男女間賃金差異や女性管理職比率の情報公表義務も始まります。どれも、「制度そのもの」より社員への説明・対応が大変になる改正と言えます。

見落としがちな「静かに効いてくる」改正

一方で、すぐに罰則があるわけではないものの、
後から効いてくる改正もあります。

たとえば、
カスタマーハラスメント対策や就活セクハラ対策。
公益通報者保護の強化。
ストレスチェック制度の対象拡大などです。

これらは、
「問題が起きてから考えよう」とすると、
一気に対応が難しくなるものばかりです。特に、人事担当者がいない、または兼務している会社ほど負担を感じやすい改正です。

社会保険の適用拡大は、すでに始まっている

今後、社会保険の適用範囲は段階的にさらに広がっていく予定です。

「うちはまだ小さいから関係ない」
「個人事業だから大丈夫」

そう思っていても、
数年後には対象になる可能性があります。

人を採用する前提、働き方の設計そのものを見直す必要が出てくる会社も少なくありません。

これらの中でも、特に

従業員50人以下の中小企業に影響が大きいと思われるものを

4つピックアップして、少し詳しく見ていきます。

子ども・子育て支援金の徴収開始(2026年4月~)

2026年4月から、新たに 「子ども・子育て支援金制度」 がスタートします。これは少子化対策の財源確保のため、医療保険料に上乗せして支援金を徴収する制度です。

昔、税理士事務所に勤めていた時に同僚から「扶養家族がいないのに社会保険料で児童手当拠出金が取られているのだけど何で?」と聞かれたことを思い出しました。

子どもの有無にかかわらず全員が負担するものです。

  • 2026年度の支援金総額目安:6,000億円程度(全国規模)
  • 支援金(一律の支援金率は標準報酬月の額0.23%)は健康保険料といっしょに徴収され、従業員と会社で労使折半での負担になります。
  • 目安として 会社員の健康保険加入者1人当たりの月額負担は約550円前後(2026年度)と試算されています。

支援金は将来的に段階的に引き上げられ、2028年度には 年間総額1兆円規模を目指す計画です。給与計算や、従業員への説明など、実務面で事前に準備が必要になる点がポイントです。

健康保険の被扶養者認定基準の見直し(2026年4月~)

健康保険の被扶養者の認定基準が見直され、扶養の判定方法がより明確になります。

従来は、過去の収入や将来の見込みを総合的に判断していたものが、「労働契約書に記載された年収見込み」を基本軸にして判断することになります。

これにより、以下の点が変わる可能性があります。

  • 収入が一定以下でも、労働契約の内容次第で扶養に入らないケースがある
  • 時給・労働時間・手当などの契約内容が“書面上はっきりしていること”が重要になる

労働条件通知書や雇用契約書の整備がこれまで以上に実務上のポイントになります。

いまだに雇用契約書を作っていない会社もあります。労働条件通知書等がなければ今までどおり課税(非課税)証明書などで確認することも可能ですが、「うちの会社には労働条件通知書はありません」と従業員のご家族に説明するのも気が引ける場面ですので、これを機に書類の整備をしていきましょう。

社会保険の適用拡大(段階的実施)

社会保険(健康保険・厚生年金)の適用対象が段階的に拡大される方向です。以下のような流れが進んでいます。

🔹 短時間労働者の加入要件の見直し

  • 週の所定労働時間が 20時間以上 であれば、原則として社会保険加入が必要になります(現在もこの条件はありますが、その判断基準がより明確化)。

🔹 賃金要件(いわゆる「106万円の壁」)の撤廃

  • 月額賃金 8万8,000円(年収約106万円) の要件が撤廃され、収入に関係なく加入対象が広がる方向です(2026年10月以降の段階的実施が想定)。

🔹 企業規模要件の段階的縮小(2027年10月~)

  • 現在は「51人以上の企業」で社会保険加入が義務付けられていますが、今後は36人以上・21人以上…と段階的に規模要件が縮小され、最終的にはどんな規模の会社でも短時間労働者が加入対象になる見込みです。

ついこの前に51人以上の企業に社会保険の適用拡大が及んだと思ったら来年にはもう次の拡大が始まりますね。このように、社会保険加入の対象が広がる=会社の負担も増える可能性があるため、対象者の洗い出しや給与計算の整備が必要になります。

ストレスチェック制度の対象拡大(段階的)

従来、ストレスチェック制度は 従業員50人以上の事業場で義務付けられていました。
しかし、改正労働安全衛生法により 全規模の事業場に対象が拡大される方向です。

具体的には…

  • 従業員50人未満の事業場でも義務化対象になる
  • 義務化の施行は 公布後3年以内(=最長2028年6月頃) までに政令で決まる予定です。

これは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、職場環境の改善につなげることを目的としたものですが対象が広がれば、産業医の確保や実施体制、外部委託の検討など、実務的な準備が必要になります。

経営者が今やるべきことは、実はシンプルです

法改正を前にすると、
「何から手を付ければいいのか分からない」
と感じる方も多いと思います。

ですが、やることはそれほど多くありません。

  • すべてを理解しようとしない
  • 自社に関係する改正だけを整理する
  • 判断に迷ったときの相談先を決めておく

これだけでも、
後から慌てるリスクは大きく減ります。

法改正は「対応」ではなく「経営判断」

法改正というと、
どうしても「守らなければならないもの」という印象が強くなりがちです。

ただ実際には、
人件費や採用、社員との関係性に直結する
経営判断のテーマでもあります。

早めに整理しておくことで、
結果的に経営者の負担が軽くなるケースは少なくありません。

まとめ

「うちの会社には、どれが関係しそうか」
それを一度整理するだけでも、十分です。

問題が起きてから慌てるより、
起きる前に整えておくほうが、
時間も気力も使わずに済みます。

もし今、
「そのうち考えよう」
「まだ大丈夫だろう」
と思っていることがあれば、
一度立ち止まって整理してみてください。

社労士は、
問題が起きてから呼ぶ存在ではなく、
起きないように一緒に整える相談先です。

必要なときに思い出していただければ、
それだけで十分だと思っています。

小田原市のベストピア社会保険労務士事務所のブログ執筆者

執筆者高橋 鋭人

難しくてつまらない士業の専門知識を「わかりやすくて面白い」「感情的なストーリー」である紙芝居形式で伝えることにより、内容理解と満足度を上げて『知らない』で『損する』がなくなる社会を創っていきます。

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